茅野行ってきました

街歩き

東京の喧騒から少し離れて、長野県茅野市への旅に出かけました。朝、新宿駅から特急あずさに乗り込み、約2時間の列車の旅。徐々に都会の風景が緑豊かな山々へと変わり、心が解き放たれる感覚が広がります。

乗車したあずさ号 茅野駅にて撮影

茅野駅に到着後、レンタカーを借りて、自然や歴史、芸術を巡る一日がスタート。静寂が広がる御射鹿池、縄文時代に触れられる尖石縄文考古館、美しい高原の風景が楽しめるビーナスラインや車山高原、そして白樺湖と諏訪の北澤美術館へと、感動の連続の旅でした。

御射鹿池(みしゃかいけ)

御射鹿池は、その美しい鏡面の水面で知られ、多くの写真家や観光客が訪れる名所です。水面に映る木々や空の景色は、訪れる人々の心を癒し、静かな時間を提供してくれます。特に朝や夕方の光が差し込む時間帯は、幻想的な雰囲気が漂い、写真愛好家にも人気のスポットです。しかし、私が訪れた日はあいにくの天気で、雨が降り続いていました。

茅野駅から約40分、車で山道を進むとやがて御射鹿池が見えてきました。標高が高いこともあり、霧が広がっていて残念ながらかなり視界が悪い…

池の周りは静寂が漂い、雨音だけが響いていました。雨の中、傘を差しながら池のほとりを歩いてみました。普段ならば、池の水面に映る美しい景色を楽しむことができるのですが、この日は雨のせいで水面が波立ち、鏡面のような反射を見ることができませんでした。雨は降り続いていたものの、暫く時間がたつと霧が晴れて水面が。

雨に濡れた木々や草花がしっとりとした美しさを放ち、別の魅力を感じることができました。雨の中でも訪れる人々がちらほらと見受けられ、皆それぞれにこの場所の静けさを楽しんでいるようでした。私は、傘を差しながらしばしの間、自然の音に耳を傾けました。

この時が一番霧が晴れていたがとても短い時間で、すぐにまた霧で覆われてしまった

御射鹿池の訪問は、天気に恵まれなかったものの、心に残る体験となりました。晴れた日に再訪し、今度こそ鏡面の水面を見てみたいという思いが強くなりました。雨の日ならではの静けさと美しさを感じることができたのも、また一つの貴重な経験でした。次回は、晴れた日に訪れて、御射鹿池の本来の美しさを堪能したいと思います。

・住所: 長野県茅野市豊平上古田
・アクセス: JR茅野駅から車で約30分
・電話番号: 0266-72-2101
・面積: 約0.1ヘクタール
・最大水深: 約7~8メートル
・貯水量: 約26,000立方メートル
御射鹿池は、標高約1,500メートルの山中に位置し、八ヶ岳中信高原国定公園内にあります。昭和8年に農業用水用に造られ、2010年には農林水産省の「ため池百選」に選定されました。水面に映るカラマツの木々が美しい水鏡を作り出します。特に秋の紅葉シーズンには、多くの観光客が訪れます。

※堤防内は立ち入り禁止で、池に近づくことはできません。

尖石(とがりいし)縄文考古館

尖石縄文考古館は、縄文時代の遺跡と出土品を展示する考古博物館です。

考古館入口

八ヶ岳の麓に位置し、茅野市周辺には数多くの縄文遺跡が点在しています。茅野市周辺は、縄文時代の集落が集中していたエリアで、多くの遺跡が発掘されています。

遺跡の場所を示す地形模型

この地域が縄文文化の中心地であった背景には、豊かな自然環境があります。八ヶ岳山麓は、水源が豊富で狩猟や採集に適した土地であり、縄文人たちがここに生活を営んでいたことが考えられます。また、季節ごとに変化する自然の恵みが、彼らの生活と深く結びついていたのでしょう。

遺跡が多く点在する理由を説明

尖石縄文考古館の見どころの一つは、国宝に指定されている2つの土偶、「縄文のビーナス」と「仮面の女神」です。

「国宝」縄文のビーナス

「縄文のビーナス」は、1986年に棚畑遺跡から出土しました。この土偶は、妊娠した女性を象徴する形状をしており、その美しい造形から「ビーナス」と呼ばれています。高さ27センチメートル、重さ2.14キログラムのこの土偶は、縄文時代中期の精神文化を考える上で非常に貴重な資料です。

もう一つの国宝、「仮面の女神」は、2000年に中ッ原遺跡から出土しました。

「国宝」仮面の女神

この土偶は、仮面をかぶったような顔立ちが特徴で、内部が中空になっている点も珍しいです。高さ34センチメートルのこの土偶は、縄文時代後期の立像土偶の中でも特に大型で、その精巧な作りから当時の高度な技術をうかがい知ることができます。

尖石縄文考古館では、これらの国宝土偶をはじめ、茅野市内の遺跡から出土した多くの考古資料が展示されています。展示室には、土器の模様づけや火起こし、縄文服の試着など、体験型のコーナーもあり、訪れる人々が縄文時代の生活を実感できる工夫がされています。

これらの縄文服を試着できる
土偶を作る体験学習も可能(要予約)

茅野市は「縄文の里」として知られ、348の遺跡が登録されています。そのうち237遺跡が縄文時代のものであり、茅野市全体がまるで一つの巨大な考古学博物館のようです。尖石縄文考古館を訪れることで、縄文時代の人々の生活や文化に触れ、古代のロマンを感じることができるでしょう。

・住所: 長野県茅野市豊平4734-132
・アクセス: JR茅野駅から車で約20分
・営業時間: 9:00~16:30
・休館日: 月曜日(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日(土・日・祝の場合は開館)、12月29日~1月3日
・入館料: 大人300円、高校生200円、小中学生100円
・電話番号: 0266-76-2270

ビーナスライン

ビーナスラインは、茅野市から美ヶ原高原までを結ぶ全長約76kmの絶景ドライブルートです。標高1,400mの高原地帯を走り、霧ヶ峰や車山高原、美ヶ原などの美しい景色を楽しめます。夏は高山植物が咲き誇り、秋は紅葉が見事です。

茅野市内から白樺湖、車山高原、霧ヶ峰を経由し諏訪湖に向かうルートを計画し、まずは白樺湖を目指します。

白樺湖は、標高1416メートルに位置する人工湖で、周囲には白樺の木々が立ち並び、その名の通り白樺の美しい風景が広がっています。

湖畔を散策しながら、湖面に映る山々や空の景色を楽しみました。湖の周りにはカフェやレストランもあり、湖を眺めながらのんびりと過ごすことができます。

白樺湖西側の高台から白樺湖を望む

次に、車山高原へ向かいました。車山高原は、標高1925メートルの車山を中心に広がる高原で、四季折々の風景が楽しめます。

特に夏の緑豊かな草原や、秋の紅葉が美しい場所です。この周辺は比較的晴れており、ドライブ中は窓を開けて新鮮な空気を吸い込みながら、自然の美しさを堪能しました。

ビーナスラインのドライブは、ただの移動手段ではなく、まるで一つの観光地を巡るような体験です。道中には展望台や休憩スポットが点在しており、どこで車を止めても美しい風景が広がっています。(当日は霧があり見ることができず…)

晴れていれば、八ヶ岳、南アルプス、中央アルプスを見ることができる

特におすすめなのは、霧ヶ峰高原の展望台です。ここから、八ヶ岳連峰や南アルプス、富士山まで見渡すことができるはずでしたが、引き続きの濃霧のため残念ながらその雄大な景色は見ることができませんでした。

霧ヶ峰高原の展望台 晴れていれば富士山も見ることができる

今回のドライブは残念ながら天気には恵まれませんでしたが、ビーナスラインや車山高原、白樺湖の空気は明らかに街中とは違う高原の清々しさで、自然の美しさを存分に楽しむことができる素晴らしい体験でした。

基本情報
・全長: 約76km
・標高: 平均1,400m、最高地点は美ヶ原高原の約1,920m
・アクセス: 茅野市側からは中央自動車道諏訪IC、松本市側からは長野自動車道松本IC、上田市側からは 上信越自動車道上田菅平ICが最寄りです。
・通行料: 無料(2002年に全線無料開放)
・通行期間: 4月中旬から11月下旬まで(冬季は一部区間が通行止め)
見どころスポット
・蓼科湖: 美しい景観とレジャー施設が充実
・北八ヶ岳ロープウェイ: 標高2,237mの山頂まで行ける大型ロープウェイ
・白樺湖: 周囲約4kmの大きな湖で、リゾート施設が多数
・霧ヶ峰: 高山植物や絶景が楽しめるエリア
・美ヶ原高原: 屋外美術館や牧場があり、開放感あふれる景観
おすすめの季節
・夏: 高山植物が咲き誇り、涼しい気候で快適なドライブが楽しめます。
・秋: 紅葉が美しく、特に10月上旬から中旬が見頃です。

北澤美術館

北澤美術館は、諏訪湖のほとりに佇む美術館で、アール・ヌーヴォーのガラス工芸や現代日本画を中心に展示しています。1983年に開館し、以来多くの芸術愛好家たちに愛され続けています。

美術館の設立者である北澤利男氏は、株式会社キッツの創業者であり、彼のコレクションを基に美術館が設立されました。

北澤利男氏像

北澤美術館の魅力の一つは、その豊富なガラス工芸コレクションです。特にエミール・ガレ、ドーム兄弟、ルネ・ラリックといったアール・ヌーヴォーの巨匠たちの作品が充実しています。ガレの作品は、自然をモチーフにした繊細なデザインと詩的な表現が特徴で、訪れる人々を魅了します。

花形ランプ「アイリスのつぼみ」 1900年のパリ万博に出品したものと同じデザイン

現在、北澤美術館では「エミール・ガレ没後120年記念特別展」が開催されています。この特別展は、2024年3月16日から2025年3月11日までの期間限定で行われており、ガレの代表作や普段は展示されない秘蔵の名作が一堂に会します。ガレの作品は、草花や昆虫など自然の形を活かした斬新なデザインが特徴で、彼の詩的な感性が感じられる作品が多く展示されています。

特別展では、ガレの代表作である「ひとよ茸ランプ」や「鯉文双魚形花瓶」などが展示されており、彼の多彩な才能を堪能することができます。また、ガレと同時代に活躍したドーム兄弟の作品も展示されており、ガラス工芸の世界をより深く楽しむことができます。

鯉文双魚形花瓶

北澤美術館は、ガラス工芸だけでなく、現代日本画のコレクションも充実しています。東山魁夷や上村松篁、山口華楊など、1960年代以降の巨匠たちの秀作が展示されており、日本画の美しさを堪能することができます。美術館内には、諏訪湖を一望できる喫茶室もあり、芸術鑑賞の合間にゆったりとしたひとときを過ごすことができます。

アクセスも便利で、JR中央線の上諏訪駅から徒歩約15分、または中央自動車道の諏訪インターチェンジから車で約15分の距離にあります。美術館は年中無休で、開館時間は9時から18時(10月から3月は17時まで)となっています。

ドーム兄弟作品「春草文花瓶」

北澤美術館は、アール・ヌーヴォーのガラス工芸と現代日本画の美しさを堪能できる場所であり、特別展「エミール・ガレ没後120年記念」は、ガレの芸術を深く理解する絶好の機会です。ぜひ訪れて、その魅力を体感してみてください。

基本情報
・所在地: 長野県諏訪市湖岸通り1-13-28
・開館日: 1983年5月21日
・専門分野: アール・ヌーヴォー期のガラス工芸、現代日本画
・収蔵作品: エミール・ガレ、ドーム兄弟、ルネ・ラリックなどのガラス工芸品約700点、現代日本画約200点
・運営: 公益財団法人北澤美術館
・アクセス: JR東日本上諏訪駅西口より徒歩約15分、諏訪ICより車で約15分
営業時間・料金
・4月~9月: 9:00~18:00
・10月~3月: 9:00~17:00
・休館日: 年中無休(展示替え等で臨時休館あり)
・入館料 大人:1,000円 / 中学生:500円 / 小学生以下:無料
見どころ
・エミール・ガレの作品: ガレの没後120年を記念した特別展も開催中
・日本画展示室: 東山魁夷や山口華楊などの巨匠の作品を展示
その他
・ミュージアムショップ: ガラス工芸品や美術館オリジナルグッズを販売
・喫茶室: 諏訪湖を一望できるカフェスペース

コメント