熊本行ってきました ~天草編~

天草地方は、美しい海と豊かな自然が織りなす風光明媚な場所です。青く広がる海に点在する大小の島々が特徴で、温暖な気候と美しい景観に恵まれています。天草は、古くから漁業が盛んな地域であり、新鮮な海の幸が楽しめる場所としても知られています。また、キリシタンの歴史や、隠れキリシタンの文化が今なお残る場所として、歴史好きの旅行者にも人気です。今回は、自然と歴史が織りなすこの天草地方についてご紹介したいと思います。

天草五橋

天草地方と本土を結ぶ重要な役割を果たしているのが「天草五橋」です。1966年に完成したこの五つの橋は、「天草パールライン」として知られ、熊本市から天草諸島までを繋ぎ、地域の発展に大きく寄与してきました。橋から望む絶景や、訪れるたびに感じる海風は、多くの観光客を魅了しています。天草五橋はただの交通手段としてだけでなく、その美しい景観と相まって、天草を訪れる人々にとっての観光名所ともなっています。

天草五橋の1号橋(天門橋)
天草五橋の1号橋、天門橋は、九州本土の三角町と大矢野島を結ぶ全長502メートルのトラス橋です。

1966年に完成し、当時は世界最長の連続トラス橋として注目を集めました。天門橋は、天草五橋の中で最も高く、海面からの高さが42メートルもあります。この橋からは、天草の美しい海と島々の景色を一望でき、特に夕暮れ時には絶景が広がります。

大矢野島側から見た天門橋

橋の近くには、天草四郎像が立つ「藍のあまくさ村」や、リラックスできる「スパ・タラソ天草」などの観光スポットもあり、訪れる人々を楽しませています。

藍のあまくさ村にある、日本一大きい「天草四郎」像(高さ15m)と疫病封じの妖怪「アマビエ」

天草五橋の2号橋(大矢野橋)
天草五橋の2号橋、大矢野橋は、大矢野島と永浦島を結ぶ全長249.1メートルのランガートラス橋です。

1966年に完成し、日本初の支間150メートル超えのランガートラス形式の橋として知られています。この橋は、ベージュ色のアーチが美しく、天草の穏やかな海と緑豊かな島々の風景を一望できる絶好のスポットです。

橋の北詰には展望所や散策路が整備されており、訪れる人々にリラックスしたひとときを提供しています。また、近くには地元の新鮮な海産物や農産物を購入できる「道の駅 上天草さんぱーる」もあり、観光客に人気です。

天草五橋の3号橋(中の橋)
天草五橋の3号橋、中の橋は、永浦島と池島を結ぶ全長361メートルのPCラーメン橋です。1966年に完成し、耐震性に優れた設計が特徴です。この橋は、橋脚から左右にバランスをとりながら張り出していく「ヤジロベー工法」で架けられました。

中の橋の北詰には、展望テラスや散策路が整備されており、天草松島の多島美を楽しむことができます。特に、船の形を模したデッキ状の展望テラスからの眺めは絶景です。また、テラス横の階段を利用すれば、海岸へと降り立つことも可能です。ドライブの際には、天草ビジターセンター下の駐車場を利用すると便利です。

天草五橋の4号橋(前島橋)
天草五橋の4号橋、前島橋は、大池島と前島を結ぶ全長510メートルのPCラーメン橋です。1966年に完成し、天草五橋の中で最も長い橋として知られています。

この橋は、大型船の通行が少ない海域に架かっているため、海面高を低く設計されており、橋を渡る際には天草松島の美しい景色を楽しむことができます。

前島橋とクルージング船

前島橋の周辺には、リゾート感あふれる商業施設「リゾラテラス天草」や、海中水族館「シードーナツ」などの観光スポットが点在しています。特に、リゾラテラス天草では、ショッピングやグルメを楽しむことができ、訪れる人々に人気です。

リゾラテラス天草

天草五橋の5号橋(松島橋)
天草五橋の5号橋、松島橋は、前島と天草上島を結ぶ全長177.7メートルのパイプアーチ橋です。1966年に完成し、日本で初めて造られた本格的なパイプアーチ構造の橋として知られています。

この橋は、真っ赤な色とシンメトリーの美しいフォルムが特徴で、天草の風景に鮮やかなアクセントを加えています。

松島橋の周辺には、歴史と自然が融合した観光スポットが点在しています。特に、天草四郎ミュージアムでは、天草・島原の乱に関する展示が充実しており、歴史を学ぶことができます。また、イルカウォッチングが楽しめる「マリノステーション シークルーズ」も人気のスポットです。

海鮮家 福伸

天草の美しい海に囲まれた上天草市に位置する「福伸」は、地元の新鮮な海産物をふんだんに使った料理で知られる人気の海鮮料理店です。11時開店で10時50分にお店に到着しましたが、すでに開店を待つ車が10台ほどあり、人気の高さをうかがえます。

天草と言えば車エビの養殖が有名で、ここ福伸のエビフライも、当然ですが、天草の豊かな海で育った新鮮な車海老を使用しています。車海老は、身が引き締まっていて甘みが強く、揚げることでその旨味がさらに引き立ちます。福伸では、この車海老を丁寧に下処理し、特製の衣をまとわせてカラッと揚げています。一口かじると、サクサクとした衣の中から、ジューシーで甘みのあるエビの身が口いっぱいに広がります。

エビフライの美味しさをさらに引き立てるのが、福伸特製のタルタルソースです。このタルタルソースは、マヨネーズをベースに、ピクルスや玉ねぎ、ハーブを加えて作られており、エビフライとの相性は抜群です。エビの甘みとタルタルソースの酸味が絶妙にマッチし、一度食べたら忘れられない味わいです。

また、福伸のエビフライ定食には、地元の新鮮な野菜を使ったサラダや、天草の海で採れた海藻を使った味噌汁がセットになっています。これらの付け合わせも、エビフライの美味しさを引き立てる重要な要素です。特に、味噌汁は海の香りが豊かで、エビフライとの相性が抜群です。

福伸の店内は、広々としていて清潔感があり、大きな窓からは天草の美しい景色を眺めることができます。特に、夕暮れ時には美しい夕日を眺めながら食事を楽しむことができ、訪れる人々にとって特別なひとときを提供してくれます。また、スタッフのサービスも丁寧で、心地よい時間を過ごすことができます。

店内奥にあるカウンターからの眺め

福伸は、地元の人々だけでなく、観光客にも人気のあるお店です。福伸のエビフライは、天草の自然の恵みと職人の技が融合した一品です。新鮮な車海老を使ったエビフライは、サクサクとした衣とジューシーな身が絶妙なバランスで、特製タルタルソースとの相性も抜群です。天草の美しい景色を眺めながら、福伸で特別なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

高舞登山

天草の風光明媚な景色をさらに楽しむため、福伸から車で10分程度の高舞登山(たかぶとやま)に向かいました。この山は標高117メートルと比較的小さな山ですが、その魅力は計り知れません。

高舞登山は、松島町の東方に位置し、千巌山と並ぶ景勝地として知られています。山頂付近には駐車場があり、そこからわずか数分のプチ登山で頂上に到達できます。子ども連れでも安心して訪れることができるので、家族でのハイキングにも最適です。

さて、山頂に到着すると、まず目に飛び込んでくるのは360度の大パノラマです。西には有明海を経て雲仙岳が見え、東には不知火海、そして遠くには阿蘇山を望むことができます。この絶景は、まさに松島随一の展望地と言えるでしょう。

特におすすめなのは、夕暮れ時の眺めです。高舞登山は「日本の夕陽百選」にも選ばれており、一面を赤く染める美しい夕陽は地元の自慢です。訪問は日中だったので残念ながら素晴らしい夕陽は見ることができませんでしたが、Webでは「夕陽が沈む瞬間、空と海が茜色に染まり、その光景はまるで絵画のよう」などの素晴らしさのコメントが目立ちます。

静かに広がるこの風景を眺めていると、日常の喧騒を忘れ、心が洗われるような気持ちになります。

中央奥には雲仙岳まで見ることができる

また、高舞登山の展望台からは、天草五橋を一望することができます。天草五橋は、上述のとおり上天草島と大矢野島を結ぶ5つの橋で、特に1号橋から5号橋までの区間は「天草パールライン」と呼ばれています。この橋を背景にした風景もまた、訪れる人々を魅了します。

パノラマ撮影で1号橋から5号橋を1枚の写真に収める

春には、山頂付近に咲く数十本の桜が見事な花を咲かせ、多くの花見客で賑わいます。四季折々の自然の風景や植物観察も楽しむことができるので、何度訪れても新しい発見をすることができます。

高舞登山は、ただの観光地ではなく、地元の人々にとっても大切な場所です。戦国時代には地元の武将が山頂で舞いを楽しんだという伝承があり、その名の由来となっています。昔から踊りだしたくなるほどの絶景が広がっていた場所なのです。

崎津教会(世界遺産)

崎津教会は、熊本県天草市に位置する美しいカトリック教会で、隠れキリシタンの歴史と共にその名を知られています。

崎津教会入口からの風景 教会と漁村が一体となっている

江戸時代、日本ではキリスト教が禁止され、多くの信者が厳しい迫害を受けました。しかし、崎津を含む天草の地域では、信仰を守り続けた隠れキリシタンがひそかに活動していました。この地形の特性や住民の強い信仰心により、彼らは巧みに信仰を隠しながらも、神への祈りを絶やすことはありませんでした。

現在の崎津教会は、1934年に建てられたもので、ゴシック様式と和風建築が融合した独特の美しさを誇ります。外観はシンプルな木造建築でありながら、内部にはステンドグラスが輝き、異国情緒を感じさせます。また、祭壇には魚網を模したデザインが施され、海に生きる人々の暮らしと信仰が深く結びついていることを象徴しています。この教会は、地元の漁師たちの生活と密接に関わり、彼らの信仰の中心として機能してきました。

崎津教会が世界遺産に登録されたのは、2018年のことです。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一部として、その信仰の歴史と建築の価値が評価されました。特に、キリスト教が禁じられていた時代にもかかわらず、信仰を続けた人々の歴史が、崎津教会を中心に語り継がれています。世界遺産登録の背景には、崎津の独特な文化的景観も大きく影響しています。漁村と教会が一体となった風景は、他に類を見ないものであり、信仰と日常生活が共存する独自の形を今に伝えています。

チャペルの鐘展望公園から崎津教会を望む

崎津教会は、訪れる人々に静かな感動を与え、隠れキリシタンたちの苦難と信仰の物語を伝え続けています。その静かな湾と共に、教会の佇まいは時代を超えた美しさを保ち、訪れる者の心に深く響きます。

大江教会

大江教会は、熊本県天草市に位置する歴史ある教会です。キリスト教が解禁された後、天草で最も早く建てられた教会として知られています。現在の建物は1933年にフランス人宣教師ガルニエ神父が地元信者と協力して建立しました。ロマネスク様式の白亜の建物は、丘の上に立ち、青い空と美しいコントラストを描きます。

教会の敷地内には、ガルニエ神父の像やルルドの聖母マリア像があり、訪れる人々に静かな祈りの場を提供しています。内部にはステンドグラスや温かみのある木製の天井があり、訪れる人々を魅了します。ただし、堂内での写真撮影は禁止されているため、その美しさは実際に訪れて体験するしかありません。

聖母マリアと大江教会

大江教会は、天草キリシタンのシンボル的存在であり、地域の人々に愛され続けています。毎年12月から1月にかけて行われる「あまくさロマンティックファンタジー」では、美しいイルミネーションが教会を彩り、訪れる人々を魅了します。

【公式】amakusa_romantic_fantasy(@amakusa_romantic_fantasy) • Instagram写真と動画

妙見浦

熊本県天草市に位置する美しい海岸線で、その風光明媚な景観から多くの観光客を魅了しています。雄大な自然が織りなすこの場所は、海と空が繋がるような大パノラマを楽しむことができ、特に夕日の時間帯には一面が黄金色に染まり、幻想的な光景が広がります。奇岩や岩礁が点在する海岸線は、荒波に浸食されてできた独特な地形で、その姿は自然の力強さを感じさせます。

妙見浦近くの十三仏公園 「天草の夕陽八景」に選定されている

妙見浦の地形は、長い年月をかけて海水による浸食と風化が繰り返された結果、現代の形に至りました。火山の噴火によって流れ出た溶岩が冷え固まり、現在のような独特の地形を作り出しました。その美しさを見た与謝野鉄幹・晶子夫妻が、鉄幹(天草の十三仏のやまに見る 海の入日とむらさきの波)・晶子(天草の西高浜のしろき磯 江蘇省より秋風ぞふく)と詠った歌碑も建っています。

奇岩が「ぞう」のように見え、ぞうさん岩と呼ばれている

妙見浦近くには白鶴浜海水浴場がありますが、ここは日本の快水浴場百選のひとつで、熊本県内でも数少ない指定を受けている海水浴場です。1.3kmにも及ぶ白浜のビーチが、鶴がその翼を広げたように見えることからその名が付けられました。抜群の透明度を誇り、海水浴はもちろんサーフィンも満喫できるほか、水平線に沈む夕陽も楽しめます。

白い砂と透明度が高い白鶴浜海岸

まとめ

天草地方は大小120もの島々からなる美しい地域で、その風光明媚な景色は訪れる人々を魅了します。青い海と緑豊かな山々が織りなす風景は、他にはない特別な場所でした。

また、ただ美しい景色を楽しむだけでなく、歴史と信仰が交錯した物語に触れることができる場所です。自然の美しさに包まれながら、隠れキリシタンたちの強い信仰の歴史に思いを馳せることで、心に残る豊かな体験を得られることができました。天草は、風景と歴史が静かに語りかける、特別な魅力を持つ地域でした。

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